オフショア(非課税地域)というと、ほとんどの人が香港やシンガポール、ドバイ、マン島などを思い浮かべると思います。ただ、アメリカのオフショアが頭に浮かぶ人はほとんどいないはずです。
あまり知られていませんが、世界最大の経済大国であるアメリカにもオフショアはあります。
今回はアメリカのオフショアである「デラウェア州、テキサス州、ネバダ州」について詳しく解説していきます。実際にこれらの地域に投資することはないと思いますが、オフショアの知識として知っておくようにしましょう。
もくじ
1、アメリカの税収は州ごとに違う
・デラウェア州
・テキサス州
・ネバダ州
2、アメリカは相続税が安い
3、アメリカは他国との租税条約がない
4、世界中からアメリカにお金が集まる
5、まとめ
6、YouTube動画はこちら!
アメリカの税率は州ごとに違う
意外に思うかもしれませんが、実はアメリカでは州ごとに税率が違います。一例として、所得税率を下図にお示し致します。
引用:アメリカ生活の知恵
カリフォルニア州のように13.3%(年収100万ドル以上の場合)もの税率になる州もあれば、2,3%程度で済む州もあります。
この税率を見ると日本より税金が安いように思えますが、一概にそうとはいいきれません。
なぜなら、アメリカでは所得税を連邦にも払う必要があります(日本における国税)。そして、連邦に支払う税金の方が、州に支払う税金より圧倒的に高いです。
また、アメリカでは日本と同じく超累進課税制度(超過累進税率)を採用しています。
それでも全体的にみると、日本より税率が低い傾向にあるのです。
デラウェア州
ここまでのお話で、「税金面ではどの州が一番お得なの?」と思った人も多いのではないでしょうか?
その答えは、「デラウェア州」になります。
デラウェア州はアメリカで2番目に小さく、人口も6番目に少ない州です。
それにも関わらず、28万社以上の企業がデラウェア州で登記しています。なんとアメリカの上場企業の2/3以上が、デラウェア州に籍を置いているのです。もちろん、上図にあるような世界的な大企業も軒並みデラウェア州で登記しています。
その理由はもちろん、デラウェア州が税制面に優れているからです。所得税率は6.6%、固定資産税は0.58%、消費税は0%と、他の州と比べても軒並み税金が低いことが分かります。
そして、デラウェア州では「州外で得た税金は課税されない」という、企業にとってはとても魅力的な税法があります(子会社を設立するなど、いくつかのスキームを作る必要はあります)。
余計な税金を払うことなく経営を行いたいと思うのは、企業として当然の考えといえます。
テキサス州
デラウェア州に続く形で、税金を安くしたのが「テキサス州」です。
法人税や消費税がかからない(もしくはとても低い)という特徴もありますが、比較的低賃金で従業員を雇うことができることも、テキサス州に企業が移転している要因です。
ネバダ州
「ネバダ州」も、デラウェア州を真似るような形で税金を安くしました。
テキサス州と同様に法人税がかからないため、カリフォルニア州から移転する企業がどんどん増えています。
アメリカは相続税が安い
アメリカに住んでいる人は「アメリカは税金が安い」とは思っていません。ただ、デラウェア州をはじめとしたオフショア地域で法人を保有している人は「アメリカは税金が安い」と痛感しているはずです。
上述のとおり、「税金が安い」、「州外で得た税金は課税されない」というのが主な理由です。
その他にも、「遺産税(相続税)が安い」というのも、アメリカの税制が優れているといわれている要因です。
アメリカの遺産税には「連邦遺産税(国税)」と「州遺産税(地方税)」がありますが、連邦遺産税は実質無税です。
なぜなら、控除額(税金の支払いが発生する金額)が1,140万ドル(約12億円)もあるため、ほとんどの人が支払対象にならないのです。
配偶者が永住権を保持していないといけませんが、日本と比べると控除額が雲泥の差であることがお分かりいただけると思います(下記画像参照)
アメリカには他国との租税条約がない
アメリカは他国と租税条約を結んでいません。「FATCA(Foreign Account Tax Compliance Act:外国口座税務順守法)」という制度があるため、アメリカは他国と税金情報を交換していないのです。
FATCAは当時のオバマ政権の政策の一つである「TaxGap対策」として2009年に制定されました。
TaxGapとは、「政府が徴収している税収と納税者が本来納税しなければならない税金の差額」のことです。
本来徴収すべき税金が納税されていないため、海外の金融機関に資産の情報提供を呼びかけているのです。また、アメリカから海外に資産が移転するのを抑制するという目的もあります。
ただ、この法律は国際法ではありません。アメリカしか適応されないため、海外の金融機関には強制力が働かないのです。
そのため、実際にはアメリカと他国の間で情報共有が十分にできていないのが現状です。FATCAがあっても租税条約がないため、情報提供を求めているアメリカが他国に情報を伝えないことも往々にしてあるのです。
このような現状があるため、アメリカはマネーロンダリングに利用されることが多いです。もちろん、規制をかけたり捜査をしたりしていますが、どうしても法の編み目を縫って犯罪が行われてしますのです。
世界中からアメリカにお金が集まる
アメリカは世界最大の経済大国です。AppleやGoogleなどの超大企業が中心となり、これからも世界経済を牽引していくでしょう。
また、デラウェア州をはじめとしたオフショア地域(非課税地域、タックスヘイブン)もあります。香港やシンガポール、ドバイ、マン島などが有名ですが、アメリカも世界有数のオフショア地域なのです。
また、FATCA(Foreign Account Tax Compliance Act:外国口座税務順守法)が本来の目的を果たせていない現状もあります。
このような背景があるため、アメリカには世界中からお金が集まります。
NYダウやNASDAQ、S&P500など、投資先の王道がアメリカにあるのも頷けると思います。
まとめ
今回は、アメリカのオフショアである「デラウェア州、テキサス州、ネバダ州」についてお話してきました。
また、相続税やFATCAなど、世界中からアメリカにお金が集まる理由についても解説してきました。
私たちがアメリカのオフショアの恩恵を受けることはありませんが、このような背景を知ることで、自分ができる海外投資(オフショア投資)に目を向けることに繋がるのです。